~ 介護に対する私の「手」にこめた想い ~

~ 介護に対する私の「手」にこめた想い ~

黒野 明日嗣 さん

済生会鹿児島病院 副院長

認知症専門医として介護には直接関わっていませんが、介護をする方に医学的な裏付けを提供できるように心がけております。そんな中でユマニチュードというケアの手法を知ってから患者への触れ方には注意するようになりました。

医療者はとかく患者からデータを引き出そうとします。短時間にたくさん知るために、ついこちらのペースになってしまう事もあります。診察を効率良くしようとするとどうしても待てずにこちらが先に動いてしまいます。

でも認知症の方はそのスピードにはついていけません。待つしかありません。そうすると見えてくるのがジェスチャーを通じて聴診と理解し、ちゃんと自分でボタンが外せる事、深呼吸して診察に協力してくれる事、脈も自ら手を差し出してくれる事が分かります。

普通の患者さんでは当たり前かもしれませんが、認知症の方がそうやって普通の人のように振る舞えるようにするには時間が必要なのです。そこに気づくと次はユマニチュードが必要です。

聴診器はいきなり胸につけるのではなく、聴診器の縁からそっとゆっくりと接触させます。丁寧さを伝えるためであったり、冬は冷たいので脅かさないようにする意味もあります。

私自身も深呼吸をする事で認知症の方も真似してくださいます。脈をふれる時も下から支えて触れるようにしています。「私、生きていますか」と冗談を言われる方もいて、そういう時は一緒に笑ってホッとします。

手はジェスチャーを伝えたり、温かさを伝えたり診察ではとても大事な役割を担っているんだと改めて感じます。

診察の最後に私は必ず握手をします。これは安心と感謝を伝えるためですが、こう書いてみると手には本当にいろいろな役割がありますね。

これからも大事な手を使って良い医療を考え続けたいと思います。