~ 私の介護への想い ~

~ 私の介護への想い ~

鹿児島県介護福祉士会 会員 Aさん

介護支援専門員として勤務

先日、ご担当させて頂いた方が旅立たれました。長女様より、「もう、私のことは分からない様子ですし、私がお見舞いに行ったからと言って何か出来るわけでもないのですし、歩けない母を連れてのお見舞いも大変ですが、母も会いたいだろうと思うし、父は相変わらず何を言いたいのか分からないので会話も成り立たないのですが、何より母が行くと父の表情が和らぐんです…」とお話しされていたのはつい2週間ほど前のことです。

入院先の病院からのご紹介で父親を、その後一年ほど過ぎてから娘さんより、両親一緒の方が私もありがたいし、何より母が「あのわがままで高次脳機能障害のせいで何を言っているかも分からない父の所へいつも来て下さり、一生懸命お話を聞いて下さるのを見ていて、親切な方だから私もお願いしたい」と言っていました。

そんなお声を頂き、ご夫婦での担当を始めた矢先に救急搬送、その後の検査で余命少ないとのお医者様からの説明でした。

お通夜へ伺うと、お勤めになられていたころのお写真が沢山飾られていました。特に印象深かったお写真は退官式で真っ白の制服をまとい、同じく真っ白な手袋をつけ敬礼をされており、その横で奥様が参列された皆様に頭を下げられているお写真です。

定年までしっかりと勤め上げ、それを陰ながら支えておられた妻が横で見守る中、写真の中に残されたそのお顔は誇らしげであり、また、どこかしら満足された表情で、何とも言えない輝かしい、眩しいようなお写真だなぁとの印象でした。

お棺に手を合わせ、眠られているそのお顔はただただ、目を瞑りお休みになられているかのようなお顔です。奥様、長女様の他、関西にお住いの次女様ご家族も戻ってこられており、お話をさせて頂きました。

次女様の旦那様より、義父のことをそこまでご理解頂けていたなんて、正直びっくりしました。今のお話を聞けただけでも父も嬉しいでしょうし、私達も義父のことを誇らしいと思えます。義母のこともどうかよろしくお願いします。

そんなお言葉を頂く中で、涙を流されつつも少し和らいだ表情になった奥様、長女様にも手をあてながら声をかけ、斎場を後にしました。

ご本人様の尊厳と共に、支援者である私自身の尊厳をも認めて頂ける。そして、逝去された後でもなお、人の心を動かすことが出来る。このことこそ、人の力だと思います。

介護を通じてこの貴重なお時間を頂けたことに感謝いたします。