私の介護への想い(佐々木 炎 さん)

~ 私の介護への想い ~

「ホッとスペース中原 代表  佐々木 炎 氏」

上智大学グリーフケア研究所非常勤講師、日本スピリチュアルケア学会公認実習施設 同施設講師,東京基督教大学講師、東北大学院文学部日本臨床宗教師実習講師、認定介護福祉士講師。
いくつかの社会福祉法人理事として特別養護老人ホームのスーパービジョンを実施していると共に 主任介護支援専門員として在宅の看取りを実践している。教会の牧師としてもご活躍している。

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少子高齢化が続くなか、介護福祉職への必要は増すばかりです。しかし介護業界は、慢性的な人手不足に陥り、人材確保や定着率向上に悩んでいます。2025年には約38万人の介護人材が不足し、介護人材を量と質の両面から確保していくことが急務となっています。

そこで、ICT化による業務効率化や生産性向上は、職員の業務負担を軽減し、業務の効率化や合理化へとつながり、情報の共有や連携がしやすくなり、介護現場の生産性向上に寄与し、介護職や利用者にとって多くのメリットを享受しているところです。

このような現状の介護福祉業界において、置き去りにされていると危惧していることがあります。それは「福祉」という根本です。特に、利用者当事者が文字や記号、情報や数字として処理され、「福祉」の「福」が「服従」の「服」となり、「服祉」になっていないかという危惧です。

「生産性向上」ばかりで、「人間」として喜怒哀楽を持ち、人生を一喜一憂する主体者としての存在を前提にした「当事者主体」が置き去りにされていないか、振り返り、問い続けなければ、簡単に「福祉」のない介護に陥ってしまうと感じています。ICT化によって何を成すのか、数値や文字にできない一人ひとりの主観、人間は文化的で全人的な存在であることを自覚しつつ、「福祉」を置き去りにせず、ICTを活用しなければ、本末転倒になってしまいます。

そこで改めて、「介護福祉」を回復することを求めたいと思います。

一つ目は、「喪失」や「老い」を、E.H.エリクソンの教えている、人生周期の老齢期における発達途上の課題として捉えることです。ここに立ちつつ一人ひとりを理解し、人格の完成へと協働する「福祉」を再び取り戻すことです。

  二つ目は、A.H.マズローが教えている「生理的」「安全」ばかりの合理化ではなく、

その上にある「帰属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」「自己超越の欲求」(他者や社会に貢献する)の視点を取り戻すことです。

 三つ目は、ポスト介護福祉の概念である「エンパワーメント」「レジリエンス」が発揮できるようにすることです。これは、人と人との関係で引き出され、利用者自身が尊厳を回復し、人として生きる幸せや満足を得るものです。

  私たちは合理化の先にある、人と人との触れ合いから生まれる「我と汝」の関係を構築し、「福祉」を深め発展していくということを自覚して、ICT化を進めることを強く求められています。

・私の介護への想い(佐々木 炎 氏)